ピロリ菌とは
ピロリ菌 (Helicobacter pylori) とは、胃の中に寄生するバクテリアの一種です。ピロリ菌が胃の粘液層に付着することで、慢性的な胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどの疾患を引き起こすことが知られています。
なかでも胃がんの多くは、ピロリ菌感染に伴う慢性萎縮性胃炎が特徴であることが分かっています。ピロリ菌感染が長期間続くと、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの炎症が慢性化することがあります。この慢性炎症が細胞の異常を引き起こし、がん細胞の発生につながると言われております。
ピロリ菌に感染した方の約10%が胃がんを発症すると言われています。特にピロリ菌感染期間が長い、ピロリ菌が胃の中で高い濃度で存在する、またはピロリ菌の菌株ががんを引き起こしやすいタイプである場合は、胃がんの発症リスクが高くなるとされています。
もちろん全てのピロリ菌感染者が胃がんを発症するわけではありませんが、ご自身とその家族を守るうえで、定期的な胃がん検診を受けることが重要です。
ピロリ菌の感染原因
ピロリ菌の主な感染原因は、感染した人と箸やコップなどを共有したり、下水道水や汚染された食品・水などからの「経口感染」です。特に母親が幼児に食べ物を口移しで与えるなどから感染が確認されていることから、感染時期はおよそ5歳程度までと考えられています。
下水道の普及により、衛生環境が整備された日本では、以前と比較すると感染率は低下してきましたが、油断は禁物です。
衛生環境のみならず、喫煙、ストレス、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用、アルコール摂取などの生活習慣もピロリ菌感染のリスクを高めると言われております。
ピロリ菌感染が疑われる場合は、早い段階で医療機関を受診し、適切な検査・治療を受けることが大切です。
ピロリ菌の検査方法
胃カメラ検査を使用しない検査
尿素呼気試験
ピロリ菌は尿素を分解するとアンモニアを生成します。このアンモニアが呼気中に排出されるため、ピロリ菌感染の有無を検査することができます。
抗体測定(血液検査)
人間は体内に何らかの細菌に感染すると抗体を生成します。ピロリ菌が体内に侵入すると、免疫反応が起こり、抗体が生成されます。この抗体を検査することで、ピロリ菌感染の有無を判定することができます。
糞便中抗体測定
糞便中にピロリ菌の抗原の有無を確認する方法です。一般的には呼気試験や血液検査よりも正確性が高いとされています。
胃カメラ検査を使用した検査
胃カメラ検査で胃の中の粘膜を採取し、組織検査や尿素呼気試験を行うことで、ピロリ菌の存在を確認することができます。
迅速ウレアーゼ試験
ピロリ菌が持っている「ウレアーゼ」という酵素の特性を利用した検査方法で、採取した胃の粘膜を特殊な反応液に添加し、添加後の反応液の色の変化でピロリ菌の有無を判定します。
組織鏡検法
採取した組織に特殊な染色色素を投与し、ピロリ菌を顕微鏡で探す方法です。
培養法
採取した組織を1週間程度培養し、ピロリ菌が増殖するかどうかを検査します。最も正確な方法である一方で、結果が判明するまでに1週間かかる点が欠点です。
ピロリ菌の除菌方法
ピロリ菌除菌する方法としては、服薬療法が一般的です。抗生物質を服用することでピロリ菌を除菌することができます。
具体的には、胃酸の分泌を抑える薬を1種類と、抗菌薬を2種類を用いて、約1週間程度服用していただきます。これら3種類の薬を1週間服用していただくことで、8割の患者様は除菌に成功すると言われています。1回目の除菌で成功しなかった方については、二次除菌、三次除菌を行います。
ピロリ菌は除菌することで再発のリスクはほとんどないとされておりますが、「ピロリ菌を除去できた=胃がんにならない」というわけではありませんので、注意が必要です。定期的に胃の検査を行い、胃がんをはじめとする疾患を予防することが大切です。
当院の消化器専門外来へお越しください
ピロリ菌感染を疑った場合は、ぜひ一度当院へお越しください。消化器の専門医が丁寧に診察を行わせていただきます。どうぞお気軽にお問い合わせください。