肝臓内科について
肝臓内科では、健診で肝臓の異常を指摘された方の精密検査のほか、脂肪肝、アルコール性肝障害、B型肝炎やC型肝炎などの疾患を、肝臓専門医が診療しています。
肝臓は、「沈黙の臓器」と呼ばれることもあり、初期の段階ではなかなか病気の発見ができない臓器になります。しかし、病気に気づかず放置し続けると肝硬変や肝がんなど重篤な疾患を引き起こしかねません。そのため、病気の早期発見・早期治療に努めることが重要であり、当院では定期的な健診をお勧めしています。
肝のう胞
液体が貯留した袋状の良性病変で、単発あるいは多発していることもあります。健診でもよく指摘され、通常は無症状で問題となりません。稀に嚢胞が大きくなると腹部膨満感、圧迫感等の自覚症状が認められることもあります。超音波検査(エコー検査)で診断可能です。
肝血管腫
肝臓の代表的な良性腫瘍です。徐々に大きくなることもあり、超音波検査(エコー検査)で経過観察を行います。初めて見つかった場合は、他の腫瘍でないことを確かめるため、精密検査をお勧めする場合があります。
脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患 NAFLD)
脂肪肝は原因によって分類され、お酒の飲み過ぎによる脂肪肝はアルコール性脂肪肝、お酒をたくさん飲まないのに発症する脂肪肝を非アルコール性脂肪肝(NAFL)といいます。
肝臓の病気というと、B型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎や、アルコール性肝障害を考えますが、最近、それらに関係なく発症する肝臓病である非アルコール性脂肪肝が増加しています。
原因は、生活習慣の乱れやストレス、肥満、運動不足などで、高血圧、糖尿病、脂質異常症を合併していることも多く、動脈硬化が関連する病気の危険性も高くなります。
他の肝臓病と同様に、放置することで、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)から、肝硬変や肝がんを発症しますので、健康診断や人間ドックなどで肝機能の指摘を受けた方は精密検査、治療を受けることが重要です。
アルコール性肝疾患
長年、多量のアルコールを摂取することで起こります。アルコールにより肝臓へ負担がかかり続け、肝機能に障害が起きている状態です。多量のアルコールとは、1日に純エタノールに換算して60g以上の飲酒をいいます。
放置することで、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変に進んでしまうことがあります。アルコールの摂取量は適量にすること、禁酒を継続することが重要です。ある一定の時期だけ注意するのではなく、中長期的にご自身の健康管理のために意識するようにしましょう。
種類 | 量 | アルコール度数 | アルコール換算量 |
---|---|---|---|
ビール(中瓶1本) | 500ml | 5% | 20ℊ |
日本酒 | 1号180ml | 15% | 22ℊ |
焼酎 | 1号180ml | 35% | 50ℊ |
ワイン(1杯) | 120ml | 12% | 12ℊ |
ウイスキー | ダブル60ml | 43% | 20ℊ |
ブランデー | ダブル60ml | 43% | 20ℊ |
B型肝炎
B型肝炎ウイルスに感染することで発症します。血液や体液を介して感染し、主な感染経路としては、出生時の母子感染やタトゥー、性交渉などが挙げられます。感染した年齢や健康状態により、症状が一過性に終わる一過性感染と生涯にわたり感染が持続する持続感染に分かれます。
出生時や3歳未満での感染の場合は持続感染になりやすく、放置すると数年から数十年を経て慢性肝炎となり、肝硬変や肝がんに進行することもあります。そのため、早期に感染を発見し適切な治療を受け、肝硬変や肝がんの発症を抑えていくことが重要です。
成人以降の感染では、感染して1~6ヶ月の潜伏期間を経て、全身倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐、褐色尿、黄疸などが出現する急性肝炎を発症します。急性肝炎の中には、致死率の高い劇症肝炎を発症することもあります。劇症化に至らない場合は、80-90%は一過性感染となり肝炎はおさまっていき、残りの10-20%は持続感染となり慢性の肝炎が持続します。
2016年10月から、0歳児へのB型肝炎ワクチンが定期接種化されましたが、まだ多くの方は抗体がないため、特にB型肝炎感染リスクの高い人はワクチン接種をお勧めします。
C型肝炎
C型肝炎ウイルスに感染することで発症します。血液を介して感染し、主な感染経路としては、輸血や注射針の使いまわし、ピアスの穴開け、針刺し事故などが挙げられます。B型肝炎と比較して、感染力が弱く性交渉など体液による感染が少ないという特徴があります。自覚症状がないために気づかないこともありますが、倦怠感や発熱、食欲低下などが感染初期に見られることがあります。感染すると約70%が持続感染となり、慢性肝炎、肝硬変、肝がんと進行することもあります。
現在はC型肝炎ウイルスに対する内服治療薬が開発され、以前のインターフェロン治療よりも副作用が少なく、95%以上でウイルスを排除できるようになりました。現在、日本国内に100万人のC型肝炎感染者がいると考えられていますが、その中には感染に気付いていない人、以前指摘されても通院していない人が多くいます。感染経路に心当たりのある方は、早めに検査して、感染していないか確認することをお勧めします。
肝硬変
B型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎や、アルコール性脂肪肝炎、非アルコール性脂肪肝炎などが持続することで線維化が拡がり、肝臓全体がごつごつして硬くなり、大きさも小さくなった状態です。診断には、血液検査とエコー検査などの画像検査が必要です。肝硬変になると、肝臓が硬いために起こる腹水や吐血の原因となる食道静脈瘤と、肝臓機能が低下するために起こる黄疸やこむらがえり、意識障害をおこす肝性脳症などが問題となります。また、年率7%程の高確率で肝細胞癌が発生するため、ガイドラインに沿って、定期的な腫瘍マーカー検査、エコー検査や造影CT検査、造影MRI検査が必要になります。当院では造影剤を使用した検査は新別府病院に依頼しています。
肝臓がん(肝細胞がん)
肝臓の細胞ががん化した状態です。B型肝炎やC型肝炎、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎などが原因となり、発症することが多くなっています。治療方法は、がんの大きさや個数、肝臓の機能、年齢や体力などを考えて、外科手術以外にも、より負担の少ない皮膚から針を刺して焼灼するラジオ波焼灼術、肝臓を栄養する血管に抗がん剤を注入した後に血管を塞栓する肝動脈化学塞栓療法、全身化学療法などがあります。他のがんと同様に早期発見が大事ですが、肝臓がんの場合は原因となる肝炎の早期発見と治療がより重要になります。